はじめに
2024年の8月にツイッターでドブソニアン望遠鏡を作ってみたいとつぶやいたところ、フォロワーの方にハレー彗星が来たころに購入したという15cm F5の主鏡を譲っていただけることになりました。

当初は、Aliexpress等で安い主鏡を買ってざっくりした望遠鏡を作ろうかと思っていましたが、せっかくちゃんとした鏡を譲っていただいたので、しっかりと作りこもうと企画を練り製作しました。
3回に渡り、企画編、製作編、運用編に分けて、このドブソニアン望遠鏡を製作したときの事を書こうと思います。
ドブソニアン望遠鏡とは
ドブソニアン望遠鏡は、手軽に大口径の観測を楽しめる反射式望遠鏡で、アメリカのジョン・ドブソンが1970年代に広めました。彼は「サイドウォーク・アストロノミー(路上天文)」運動を推進し、多くの人に天体観測の魅力を伝えました。望遠鏡はニュートン式反射鏡を採用し、シンプルな箱型の経緯台を使用するため、安価かつ軽量で持ち運びが容易です。星雲・星団の観測に適しており、アマチュア天文家の間で眼視用途として非常に人気があります。
ドブソニアン望遠鏡のタイプ
ドブソニアン望遠鏡の製作にあたって、既存のドブソニアン望遠鏡のタイプを個人的な視点もありますが、4タイプに整理してみました。タイプ名は勝手につけましたので参考までに。
※下記の表の画像はWikipediaより利用しています。情報についてはクリックをしてください。
タイプ名 | 概要 | 参考画像 | メリット | デメリット |
Traditional J-Dob | 旧来、日本でDIYで作られていたドブソニアン望遠鏡のタイプ。主鏡ケースも架台もほぼ木の板で構成されています。 | 下記リンク、「天体望遠鏡を作ってみたい」章を参照ください。 https://www.astroarts.co.jp/special/2005summer/vacation-j.shtml | 最低限の工作、部品で作成することができます。 部品が少ないので比較的軽量で気軽に持ち運びができます。 | 副鏡の光軸調整個所などシンプルな構造ゆえ、オミットされている箇所があります。 また、オープンな構造のため、明るい環境下で観望する場合は、周辺光の影響によりコントラストが低下します。 |
International Handmade Dob | アメリカでDIYで作られてきたドブソニアン望遠鏡のタイプです。 鏡筒は何らかの筒を使い、主鏡はボックスの中に入れます。 | ![]() | 可搬性もある程度あり、町中の明るい環境下でも影響を受けづらい鏡筒です。 設置への準備の負担は低いです。 | 大型の主鏡を使う場合は本体が大きくなり保管場所や運搬方法を考慮する必要があります。 |
Proprietary Dob | 商業的に量産されたドブソニアン望遠鏡。スムーズに動く架台と金属製などしっかりした鏡筒やピニオン式の接眼部が特徴です。光軸調整などの機構も持つものが多いです。 | ![]() | 高い完成度の大口径望遠鏡を比較的安価に手に入れることができます。 設置への準備の負担は低いです。 | DIY要素なし。 また、メーカーが想定する使用方法から離れた場合、バランスが悪くなったりすることが想定されます。 |
Travel Dob | 鏡筒に筒を使わずトラス構造のフレームで構成した望遠鏡になります。 | ![]() | 大口径でも可搬性に優れた望遠鏡になります。 | 構成する部品点数が増えますので、設置での負担が増加します。 DIYする上でそれぞれの部品をある程度正確に加工する必要があります。 |
コンセプト決め
ドブソニアンを分類した後、実際に自分で使うシーンをイメージしてコンセプトを決めました。
想定した利用シーン
- 天体写真撮影に行った際に撮影中に気軽に設置し観望を行いたい
- 観望会などに参加した際に目で見える天体を中心に導入し望遠鏡での観望を楽しみたい
- 赤道儀の望遠鏡を設置する元気がないときにさっとベランダやマンションの通路で観望を楽しみたい
- 様々なアイピースや倍率でいろいろな天体を眼視で楽しみたい
これらの用途をもとに整理すると、下記のような条件が見えてきました。
- マンションの通路など明るい環境下でも利用することがある
- 簡単に運搬し設置することができる
- 様々なアイピースに対応させたい
- 設置に関してはなるべく負担が無い物にしたい
これらの条件を満たすべく「International Handmade Dob」と「Proprietary Dob」の中間のような望遠鏡を作ろうと思いました。
製作・機能要件の検討
ドブソニアン望遠鏡を作るうえでどういった作り方をするか、機能を持たせるかを考えました。
- おそらく見える像にはある程度こだわるので、光軸調整は主鏡・副鏡ともにできるようにしたい
- CADの経験はないが、Adobe Illustratorは使えるので、ホームセンターのカインズで貸し出しているレーザーカッターを用いて部品を製作する
- 3Dプリンターは持っていないのでまずはほとんどの構成部品を木材やMDF材などホームセンターで手に入る部材で作成する
- 構造が複雑になり便利なものがすでに単体で販売されている接眼部やファインダーなどは既製品の部品を利用する
以上で大体の製作に向けた方針決めは固まり、製作に進みました。
次回は、製作時のことを中心に書きます。お楽しみに。
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